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2006年3月22日 (水)

刑法の解

僕は過去に「死刑。その6」で

刑法と死刑制度とはあまり関係ない
死刑存廃論は、刑法を超えた部分の議論

と書きました。僕は最初の「死刑。その1」でも述べている通り、
「法に死刑が定められている以上、それは報復刑に基づいた罰則規定であることは明らか」
なので、それを基に自論を展開しています。
つまり、僕は現行刑法を是認した上で死刑存続を唱えているわけです。

僕は刑法を基に自論を組み立てているが、もりー&霧鈴は違う立脚点に基づいて存続論を唱えている。
2人の自論を読んで
「おそらく2人は刑法を専門的に学んだことはないな」
と判断したため、「刑法と死刑制度はあまり関係がない」と書き、

「とりあえず、刑法議論はやめて死刑存廃論のみでいこうではないか。刑法を知らなくても死刑存廃について議論はできるんだよ」

というサインを送ったつもりだったんですが、「知らない」というのは恐ろしいもので、正直なところ、ここで反撃を受けるとは想定していませんでした。
やはり一定期間「専門的に」刑法を学んだ僕にとって、素人2人の「反撃」は「的外れ」としか表現しようがないものだったわけです。

僕が投げかけた問い

甲が乙から盗んだ拳銃で丙を射殺した。当時、甲は麻薬を使用し錯乱状態にあった。述べよ。

に関して、
【もりーの解】

刑法犯罪が成立しそうなのは
甲の
「拳銃を乙から盗む」―――― 窃盗罪 
「拳銃で丙を殺す」 ―――― 殺人罪
の2点のみ。
つまり
「麻薬を使用」「拳銃の不法所持」は刑法に該当無しなので、
「窃盗罪」と「殺人罪」。 状況により併合罪となる。
か、もしくは
刑法31・32・34の2・35~39・41・42・66~72条各規定により、
上の「窃盗罪」「殺人罪」、もしくはその併合罪(殺人罪)が
状況により免除・失効・減軽を受ける。
http://blog.livedoor.jp/muddymolly/archives/50080133.html

【霧鈴の解】

まず、甲の、「拳銃を盗んだ行為」に関して
   ○その行為は、「窃盗であったか」、
   ○つまり、不当な行為であったかどうか。
   ○始めから丙を射殺する目的で得たかどうか
甲の、「麻薬を使用して錯乱状態で丙を射殺した行為」に関して
   ○その錯乱状態において、責任能力が認められるか
   ○正当防衛にはあたらないか
   ○殺意があったかどうか、また、情状酌量の余地はあるか
といったところでしょうか。漏れはあると思いますけれど。
「拳銃を所持していた乙」、「麻薬を打った売人」、「丙に関して」
は、おそらく問われていないと思われますので述べません。
http://ayzad-khast.cocolog-nifty.com/blog/2006/03/__b7b9.html

やれやれ…
今までに何度も何度も繰り返し繰り返し、「刑法」なるものを解説してきたにも関わらず、もりーに至っては

私の答えれる範囲としてはこれが精一杯です。

ですか。はぁぁぁぁ~~~。
特大級のため息が出てしまいますな。

霧鈴の解に関しては、多少、「刑法」なるものを直感的に理解しているな、と感じるけれども、2人とも現状では刑法論議ができるレベルではない。
だからこそ
「刑法議論はやめよう」
と慈悲の心で接してさしあげたにも関わらず、なおも姿勢を崩さない強情さ

ということで、導き出される結論の是非はともかくとして、あくまでも「刑法運用に際する考え方」を教えて差し上げましょう。
ただ、何度も書いてきた通り、「専門的に」学んだのは10年以上前なので、専門用語に間違いがあるかもしれません。
その点はご了承を。以下はあくまでも
「現在、実際に運用されている刑法における思考法」
です。つまり「僕の私的な考え方ではない」という点に留意を。

【解】

乙が不法に拳銃を所持していたものだとしても甲は乙の所有権、または占有権を侵害したので窃盗罪の構成要件に該当する。
また、甲はその拳銃で丙を射殺したことから、甲の行為は丙に対する殺人罪の構成要件を満たしている。
従って、甲は窃盗罪、殺人罪の構成要件を満たしていることになる。

甲は当時、精神錯乱状態に陥っており、予見可能性があったとは言い難い。ただし、甲が当初から麻薬の力を借りて窃盗、殺人を図ったのであれば、予見可能性が認められる。
しかし、当初は錯乱状態にあったため、責任能力を有していたとはいえない。

よって、甲の行為には構成要件該当性、及び予見可能性はあったといえるが、責任能力がなかったため、甲には刑法上のいかなる犯罪も成立しない。

…ちょっと大雑把すぎますが、犯罪を成立させる要件は前にも書いたとおり、
「構成要件該当性」
「予見可能性」
「責任能力」
の3点セットです。

これは、専門家にきちんと教わらなければなかなか理解し難い厄介な代物。
「犯罪」とひと口に言われますが、それぞれの犯罪には「構成要件」なるものが存在します。
例えば
「所有権を侵害した」
「人を殺した」
ですね。
でも、実はこれだけでは「犯罪成立」にはならない。

構成要件を満たしていれば、とりあえずは逮捕されます。
が、犯罪を成立させるにはさらに
「予見可能性」
「責任能力」
が必要になってきます。
構成要件を満たしただけでは、「犯罪」にはならない。

「条文が定める要件に違反しているか」
=構成要件該当性

「このような行為をすれば、どのような結果が導き出されるか予測できるか」
=「予見可能性」

「物事の善悪の判断ができる状態だったか」
=「責任能力」

この3つの要素をクリアした時に初めて「犯罪成立」なわけです。
従って、ここまでは論理的に判断しなければならない。

僕が主張する
「刑法は理詰め」
の根拠とは、まさしくこのことなわけです。
ここまでで「感情」なるものを差し挟むことはできない。
極めてオートマティックで、数学的。
まぁ、言ってみれば、パソコンのプログラム作成の際に書くフローチャートのようなもんです。

まずAという出発点がある。
そして分岐点が要所要所に存在する。
「もしイエスならBに進む。ノーなら終了」
B地点に進んだ時に、
「もしイエスならCに進む。ノーなら終了」
C地点に進んだ時に、
「もしイエスならDに進む。ノーなら終了」
D地点までたどり着ければ「犯罪成立」になる。
つまり、分岐点には「イエスかノー」しか存在しない。
1と0のみで構成されるコンピュータと似てますね。

だからこそ、「責任能力」を満たさないきちがいには犯罪が成立しないわけです。
これは「情状酌量」の問題ではない。
また、道を歩いていて人とぶつかって怪我をさせてしまった場合、「傷害罪」の構成要件は満たしているんですが、「予見可能性」はない。
だから、傷害罪は適用されないわけです。

さて、刑法には「罪」と「罰」が記されています
これは刑法の世界では切り離されて論議されます。

Aという「罪」が成立すれば、Bという「罰」が適用される。
これが刑法の条文。
でも、
Bという「罰」を適用する前段として、Aという「罪」を成立させなければならない。
Aという「罪」が成立した時に初めてBという「罰」を適用できる。
「罪」が成立しなければ「罰」は適用できない。
「罪」が成立し、「罰」が適用される段階に至って、初めて「感情」なるものが介入してくるわけです。

んで、

>逮捕する際に「どの条文を適用すればいいのか」で様々な解釈が生まれる。
>その程度のことは百も承知。
と書いておきながら
「様々な解釈が生まれる」 にも関わらず、 「数学的にたった一つの答えを導くことが可能だ」 と言ってるわけですか?http://blog.livedoor.jp/muddymolly/archives/50079950.html

ですが、流れとしては
「テレホンカードが偽造された。さて、どの条文を適用すべきか」

「有価証券偽造ではいかがか」

「でも、テレホンカードは有価証券にあたるのか」

「有価証券と判断しようではないか」

「ならば、構成要件該当性は満たしている」

「予見可能性と責任能力はいかがか」

「それも満たしている」

「ならば犯罪成立」

です。
つまり、
「テレホンカードは有価証券か」

「有価証券の範囲」に関する議論であり、
「構成要件に関する議論」ではないわけです。

ここで、
「テレホンカードは有価証券ではない」
となると、違う条文を当てはめなければならない。
その部分での「解釈の違い」です。
別の条文を当てはめることになれば、

「じゃ窃盗罪を適用するという方法もあるぞ」

「うん。その構成要件該当性は満たしているな」

「予見可能性と責任能力はどうだ」

「それも満たしているな」

「ならば犯罪成立だ」

であり、構成要件該当性と予見可能性、責任能力が満たされていれば、
どの条文を当てはめても「犯罪成立」という、たった一つの結論を導き出すことは「可能」ということになります。

つまり、僕がいうところの
「様々な解釈が生まれる」
というのは、
「どの条文を当てはめるべきか。どの条文の構成要件を満たしているか」
に関する解釈であり、その解釈に結論が出れば、あとは
「その犯罪が成立するか否か」
という「たったひとつの答え」が導き出される
、というものであります。

と、忘れてしまうところでしたが、2人(特にもりー)が執拗に突付いてくるところの
「有罪か無罪か」
という点に関しては、過去に僕が「構成要件該当性」「予見可能性」「責任能力」に関する説明を入れたにも関わらず、その点に関する質問なしに突っ込んでくるので、
「もりーは刑法を理解しているもの」
として、面倒くさかったので「有罪」「無罪」と表記しましたが、
「2人とも刑法の運用の仕方を理解していない」
ということが理解できたので、今後とももりーor霧鈴が刑法議論を続けるのであれば、「構成要件」とか「犯罪成立」などという表現に可能な限り改めることにします。

たぶん、「専門的に」学んだことのない2人にはますます理解できない世界に入っていく事になると思いますが、それでもまだ刑法に関する議論を進めるつもりかな?
僕としては、もうそろそろ、2人とも
「自分は刑法運用の根本的な部分を理解できていない」
ということを認めて、刑法議論をやめるのが得策だと思うのだが、いかがか。

それでも「徹底討論」したいというのであれば、玉砕覚悟でかかってきなされ。

ついでに、もりーの問い

甲が乙から盗んだ拳銃で丙を射殺した。
当時、甲は麻薬を使用し錯乱状態にあった。
以下の場合についてそれぞれ述べよ。
① 甲は錯乱状態で無関係の通行人丙を射殺した。
② 甲は錯乱状態から一瞬冷め、日頃から小競り合いの耐えない丙を射殺した。
③ 甲は錯乱状態で幼少より酷い虐待を受けてきた父親丙を射殺した。

は、上記の運用方法を当てはめれば簡単に答えが導き出せます。
従って、
自分で考えろ
答え合わせはしてやる。

それと、霧鈴が「不適切な質問」としていたけど、これが刑法学における質問形式です。
ま、「刑法」の「け」の字も分かっていないから「不適切」と感じるのは仕方ないか…

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コメント

sdgfh hj kk

投稿: ephedrine | 2006年4月28日 (金) 16時12分

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