2006年11月17日 (金)

クライマーズ・ハイ

クライマーズ・ハイ Book クライマーズ・ハイ

著者:横山 秀夫
販売元:文藝春秋
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「半落ち」の作者が書いた本です。
僕は歴史小説以外では、小説なるものをほとんど読まないので、
この作者の他の作品は一切読んでません。

ちなみに、好きな作家は宮城谷昌光さんと司馬遼太郎さん。
あと、井沢元彦さん。
司馬さんは故人なので、新作は出ませんが、
宮城谷さんと井沢さんは、新作が出てて、書店で見かけたら、
必ずと言っていいほど購入してますね。
井沢さんの「逆説の日本史」シリーズは愛読書です。
・・・と、それだけ見ても
「歴史もの」一徹
というのが分かっていただけるでしょう。

小説を読むのは、会社の先輩などに勧められたときぐらい。
「Op.ローズダスト」もそうでした。
今回の「クライマーズ・ハイ」も同様。
「Op.~」は1人の親しい先輩の勧めでしたが、
「クライマーズ・ハイ」は舞台が新聞社ということで、
部内でも読んでない人の方が少ないぐらいだったので、
文庫化されたのをきっかけに読んでみました。

一気に最後まで読んでしまいましたね。
面白かった。
主な舞台は1985年、日航ジャンボ墜落に遭遇した地元紙。
全権デスクを任された悠木なる人物が、
「新聞の使命とは何か」
という難問に格闘する様子が描かれています。

amazonでの書評を見ていると、
本書に描かれている人間像に感銘を受けた人が多いようですが、
僕は(というか、うちの会社の連中も)、どうしても
新聞記者という自己体験と照らし合わせて読んでしまいます。

また、単行本の書評を見てると、

怒鳴り合いやののしり合いがたくさんあり、読んでいて少々疲れた。

とか

それにしても上下関係もなく、ここまで激しくケンカが
できるものなのか・・?

とか

最初の頃は読んでいて気持ちよかったのですが、途中で「何でみんなこんなに怒ってんの?」と
逆に覚めてしまったのも事実。

などと書かれておりますが、あれが新聞社の実情です。
「あほ、ぼけ、カス」
は当たり前。
時間に追いまくられる仕事なので、締め切り間際になると、
特に僕が在籍してる整理部では、原稿と怒号が飛び交い、
まさに「戦場」と化します。
そんな中で、「相手は上司だから…」などと遠慮する余裕なぞありません。

いや、むしろ、新聞社の特に編集部門ってのは、
「権威なんぞクソ食らえ」
という連中が揃ってるところで、
一般企業ではとてもつとまらない奴らの巣窟なんですよね。

幸いにもうちの会社には、本書に出てくる「派閥」なるものは、
少なくとも僕が知ってる範囲では存在しないと思ってるんですが、
胸ぐらつかんでの怒鳴りあいとか、
上司に向かって
「うるせー。あっち行け」
ってのは日常風景です。

だから、読んでて、
「こういうの、あるある」
と。

社によって、風土が異なるようなので、
一概には言い切れませんが、
「新聞社ってどんな感じで仕事してるんだろう」
と興味を持っている人には、ぜひお勧めしたい一品でした。

強いていえば、僕が所属する整理部に関する詳述がなかったのが少し残念。
作者はおそらく、自身が在籍していた
上毛新聞の様子を描いているんでしょうが、
「上毛新聞の整理部って、どういう組織構成になってるんだろう?」
という疑問が沸きました。

でも、整理部の吉井くんが
「2種類作っておくか」
とつぶやくシーンなんかは、
「そうそう。俺もやったことある」
みたいな感じ。

本書に整理部に関する詳述があれば、
僕にとっては文句なしの逸品になってたかな、と。
そうすると、もっと激しい描写が出てくるはずなんだけどなぁ、なんて。

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2006年5月 1日 (月)

国家の品格って

国家の品格

一言で言うなれば、保守系の書籍。
「日本の”品格”を取り戻せ」
という内容です。

少し前に読んだものです。
その後も大量の書籍を読んでいるので、具体的な記述に関する詳細はあいまいになっていますが、過去に大量に出版されている保守系の書籍の中では異彩を放っていますね。

というのも、過去に僕が読んだ保守系の書籍には、
「過去の日本人は気高く、堂々としていた。日本人の精神土壌を取り戻せ」
と徒に「愛国心」をかきたてる内容が多かった。
つまり、「過去の栄光」をいつまでも引きずっている感が否めない。

僕は保守派で、それらの本を大量に読んできたんですが、読むたびに、
「またこれかよ…」
とうんざりしていたところに、「国家の品格 」の登場です。

著者・藤原正彦氏は数学者だそうで、導き出される結論は他の保守系の書籍と代わり映えしませんでしたが、そこに至るアプローチは、今までに触れたことのない斬新な内容でした。

とりあえず目次を引用させていただきます。

第一章 近代的合理精神の限界
すべての先進国で社会の荒廃が進行している。その原因は、近代のあらゆるイデオロギーの根幹を成す「近代的合理精神が限界にぶつかったことにある。

第二章 「論理」だけでは世界が破綻する
「論理を徹底すれば問題が解決できる」という考え方は誤りである。帝国主義でも共産主義でも資本主義でも例外はない。「美しい論理」に内在する四つの欠陥を指摘する。

第三章 自由、平等、民主主義を疑う
自由と平等の概念は欧米が作り上げた「フィクション」である。民主主義の前提条件、「成熟した国民」は永遠に存在しない。欧米社会の前提を根底から問う。

第四章 「情緒と形」の国、日本
自然への感受性、もののあわれ、懐かしさ、惻隠の情…。論理偏重の欧米型文明に代わりうる、「情緒」や「形」を重んじた日本型文明の可能性。

第五章 「武士道精神」の復活を
鎌倉武士の「戦いの掟」だった武士道は、日本人の道徳の中核をなす「武士道精神」へと洗練されてきた。新渡戸稲造の『武士道』をひもときながら、その今日性を論じる。

第六章 なぜ「情緒と形」が大事なのか
「情緒と形」の文明は、日本に限定すべきものではない。そこには世界に通用する普遍性がある。六つの理由を挙げて説く、「情緒と形」の大切さ。

第七章 国家の品格
日本が目指すべきは「普通の国」ではない。他のどことも徹底的に違う「異常な国」だ―。「天才を生む国家」の条件、「品格ある国家」の指標とは。

内容全般を通してみると、少し前に出版された、前野徹氏による「新・歴史の真実―混迷する世界の救世主ニッポン 」と瓜二つ。
武士道を大切にせよ、だの、愛国心と国益主義とは別物だ、などなど。

「歴史の真実」もそこそこ売れたようですが、「国家の品格」は破竹の勢いで発行部数を増やしています。

聞くところによると、読者は賛否両論。いずれも「激しく賛成」か「激しく反対」かのいずれからしいです。出版社側は「これほど激しい反響を呼んだ書籍も珍しい」とのこと。

欧米流の「論理至上主義」を木っ端微塵に打ち砕く、というスタンスに「論理至上」を信奉している人は反発するんでしょう。
が、一方で次々と崩れていく日本のモラルについて、疑念を抱きつつも理由が分からなかった人たちにとっては、一定の指針を示してくれる絶好の書籍になったに違いない、と思います。

僕自身、「論理だけでは人は生きていけない」と思っているんですが、藤原氏ほど明確に、
「これこれ、こうだからダメなんだ!」
と、ズバッと言い切ってしまう論調は初めて見受けました。そこが本書の最大の魅力ではないかと思います。

ただ、あまりにも大胆すぎて、「?」と感じる部分はあるにはあるんですが、あらゆる点で「一理あるな」と思わせる部分多数。

「面白いかどうか」
と聞かれると、
「まぁ、それなりには…」
ですし、鵜呑みにしてはいけないんじゃないか、と思う部分も多々。
でも、賛否に関わらず、ベストセラーなんだし、一読の価値はあると思います。
他の保守系書籍よりは、はるかに読みやすいですよ。

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2006年2月17日 (金)

へんないきもの

へんないきもの

へんないきもの 」という本がある。
初版は2004年8月。過去に読んだ「ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 」を探していたところ、たまたま見かけたので注文してみたのだが、これは! 素晴らしい。

キンチャクガニという、「ボンボン」のようなイソギンチャクを手にもってえさ集めや威嚇をするカニがいるという。
時にはキンチャクガニ同士でそのボンボンを振り合い、相手のカニを縄張りから追い出そうと威嚇しあうという。その説明文の一部。

だが、お互いに手の内がばれている武器で威嚇しあっても何の意味があろうか。このカニは「道具を使う唯一の無脊椎動物」などとおだてられていい気になっているが、一向にそこに気づかぬあたりが甲殻類の限界というものであろう。

甲殻類が「いい気になっている」って…。キンチャクガニからそんな話でも聞いたのか? って感じ。
最初の数種の動物に関する説明文もそこそこ面白いのだが、このキンチャクガニから一気にヒートアップする。惚れた。センジュナマコについては

我々大和民族には真似のできないベタなアメリカン・エロジョークで回答した男性もいて、文化とは何かを考えさせられる。その回答とはこうだ。
「この金玉から生えてる触手は君の食欲をそそったりするのかい?」
思わず真珠湾もう一発、などと考えてしまうがここは忍耐だ。

ここだけをピックアップすると「ナマコとパールハーバー…何の関係があるんだ?」だが、全体を通して読むと、妙に納得してしまう。著者の早川いくをさんの文才。もはや脱帽するしかないですね。 
ラッコに関しては

おじさんたちにとっては、かわいいラッコちゃんも害獣なんだ。がいじゅう、ていうのはわるさをするくそケダモノっていみだよ。

「くそケダモノ」…著者の手にかかってはラッコもボロクソ。

タイトルだけを見ると、子供向けの本のような気がするのだが、中身は完全に大人向けだ。そもそも帯が「お前ら何なんだ」だもんな。変な動物の説明と思って読んでいると、文体、内容が面白いもんでついつい一気読みしてしまうのだが、よくよく考えてみると、動物の説明とは関係ない文章が大量に混じっていて、変な動物の紹介というよりは、ウケ狙いとしか考えられないような内容。久々に面白い本を読んだ。

さて、ワンダフル・ライフを読んだ時にも感じたことだが、「へんないきもの」とはあくまでも「人間主体」の視点だ。奴らにとってみれば人間の方がはるかに「へんないきもの」ではないのだろうか。

まぁ、どっちでもいいけどね。

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